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INTERVIEW

2016/11/29

『新たなる仲間との新たなる船出』ドレスコーズ インタヴュー

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2014年、ドレスコーズはフロントマンの志磨遼平を除く3名が脱退。結果、志磨のソロプロジェクトとなったドレスコーズ。ほぼ一人で制作された前作『1』とは打って変わり、今作は豪華なメンバーをサポートに迎えた作品に仕上がった。さらには、ライヴごとにそのパフォーマンス形態を変えるなど、ファンを驚かせ続けている彼に、アルバムの話はもちろん、志磨自身が考える音楽に対する姿勢を深く、熱く語ってもらった。

多彩なゲストを迎えた新作『オーディション』

——ニューアルバム『オーディション』の発売おめでとうございます。

ありがとうございます。

——アーティスト写真も一新されて、ピンクの背景にタンクトップの志磨さんが非常に衝撃的だったのですが。

これは、意外と誰にも聞かれなかったので嬉しい質問ですね。『オーディション』というタイトルが決まって、実際にオーディションを受けている私をジャケットにしようと思いまして。胸元が開いたタイトな服装で、パステルカラーのレオタードをもう少しそれっぽくしたブロードウェイ特有のファッションがあるじゃないですか。そういうイメージでスタイリングをしてくださいと頼んだらこうなりました。“オーディションを受けている人”というファッションです。

——アルバムの歌詞カードを拝見しますと、喜怒哀楽の表情豊かな志磨さんが至るところに写っていました。今までのカリスマ性のある志磨さんとは違って人間味あふれる志磨さんになっていましたが……。

それ多分脇毛のせいじゃないですか(笑)。

——(笑)。これもオーディションを意識してということですか?

そうです。アートディレクターをしてくださったヒロ杉山さんと相談して、もう本当に演技をしてもらおうっていうことで。衣装もそうですけど、オーディションを受けている模様を写真に撮りましょう、と。撮りながら「はい! 笑ってください!」、「はい! じゃあ次は悲しい顔!」とか、本当の演技のオーディションみたいで面白かったです。

——今回の『オーディション』では、一人で作られた前作『1』とは打って変わって、OKAMOTO’Sのオカモトコウキさんや、凛として時雨のピエール中野さんら豪華なメンバーと共に制作されています。彼らとやることで何か新しい発見などはありましたか?

それはもうめちゃくちゃありますね。一番驚いたのは、一緒に演奏する人が変わるだけでこんなに音楽が変わるのかということで。こういうことは普段はなかなか試せないのでね。そもそもこのようなメンバーとやることになったのは、アルバムよりライヴの方が先だったんです。一人体制になってから、ライヴは一本ごとに違うメンバーで出演していまして。それがあまりにも面白かったので、それをそのままアルバムに落とし込むとどうなるかということを試したくなり、曲ごとにメンバーが変わるという形になったんですよ。もちろんメンバーによって音楽的な影響もたくさん受けるんですけど、結局は音楽というより人と人との関係の話なんだなぁと思って。それがすごく感動しましたね。

——「人と人との関係」と言えば、以前のライヴでは毛皮のマリーズで共にしたベーシスト、栗本ヒロコさんとも「ドレスコーズFEMME」を結成されていましたよね。

メンバーを変えながらライヴをやるなかで、普通ではなかなかできない、誰もできないことをやりたいと思いまして。僕以外全員女子っていう、そういう形態のバンドってなかなかいないじゃないですか。それで自分の知っている女性に声をかけていくと、ベースは栗本さんかなというのが自然と出てきたという感じですかね。

ギターサウンドに対するこだわり

——なるほど。それで今作のサウンドについて言うと、エレキギターがあまり主張していなかった前作『1』に対して、「しんせい」や「メロウゴールド」のアウトロなど、ポップなサウンドのなかにもエレキギターの主張が強く見受けられるところが印象に残りました。

僕はすごくロック音楽が好きなんですけど、個人的にエレキギターはそんなに好きじゃないんですよ(笑)。少し遡りますけど、それは毛皮のマリーズとして活動していた頃(※2011年解散)の後半くらいに気付きまして。エレキギターがメインになる歌を10年以上やってきて「待てよ? 自分エレキギターあまり好きちゃうな?」って思ったんです(笑)。その代わりにピアノやストリングスなどに興味がいきまして。

——そうなんですか。

それで、そこからドレスコーズとしてバンドを組むときに、もう一度ちゃんとギターと向き合おうと思って。でも、僕が「やっぱりギターってすごいな」って思わせてくれるギタリストは丸山(康太。ドレスコーズの元メンバー。2014年脱退。)くらいしか思いつかなくて。彼のギターならずっと聴いていたい、彼のギターなら僕の歌に入れてほしいと思って共に活動していたんです。ただ、そこからいろいろあって、去年一人になって。そうなると当然、ギターがあまり入らなくなるんですよね。それで前作の『1』は、エレキギターの色が薄い作品になったんです。でも、今回『オーディション』を作るにあたって、前作の『1』から短い期間でどれだけ違いを見せられるか、ということに挑戦したくて。それまでとはなるべく遠く離れた音楽に辿り着きたいと思ったんですね。

——はい。

そこでギターのことをもう一回考えたところ、僕の好きなギタリストみんなに入ってもらおうと思って。「一体ギターというのは何なのか?」というのを目の前で見てやろうと。それでいろんな人が、僕の思いつかないようなアレンジとかアプローチを実際に目の前でしてくれる。それを見て「なるほど!」という勉強をしたかったというのが大きいですね。ギターの魅力というのをもう一回知りたかったんです。

——なるほど。一方、『オーディション』の楽曲の歌詞には「夢」や「死」、「泡」などがよく使われていて、何かが終わってしまう儚さを感じました。アルバムを作るにあたって意識したコンセプトやイメージなどはありましたか?

僕は電球とか花瓶とか、そういった儚いものを常に身近に置いておくんですね。例えば、「この先ずっと」という未来の話をしているときに、「死」とか「消える」とかそういうものを置いておくと、「この先」の「先」がものすごく迫ってきてリアリティが増すじゃないですか。

——そうですね。

だから、ただ「好きだよ」と歌うより、「好きです、死ぬまでは」と言う。そうすると、「死ぬけど」という前提があることによって、いろんなものがぐっと切なくなる感じがして。そういうのが好きなんですよね。

志磨遼平が語る、ロックの定義

——そのなかでも、「スローガン」からは儚さとは対照的に、“すすめられなくていいんだよ 自分で見つけ出せる”という歌詞に、とても能動的な決意を感じます。

「スローガン」は、能動的ですごく強い歌のくせに、特に何も言ってないっていうのがミソで(笑)。「ちょっとわかりません」とか、「どちらか選べません」っていうのは受動じゃないですか。それをあたかも堂々と言うんです。

——(笑)。

「はい!」って勢いよく手を挙げて、「何だ?」って指すと「わかりません!」って堂々と言うやつです(笑)。答えがない!

——それがロックということですか?

いや、何て言うんでしょうね。僕が音楽をずっとやっている間も、社会ではいろんなことが起こるじゃないですか。例えば「戦争反対!」というのを音楽で表現したいとする。その気持ちはよくわかるんですけど、それを言ってしまったら、その人の歌う理由がすごく薄くなる気がしていて、言えるのなら歌わなくてもいいよなと思うんですね。

——そうですね。

そっちの方が早いから。「戦争反対!」という1秒もかからない言葉を3分くらいかけて歌うのはすごく効率が悪いと思ってて。だから僕は言わない派なんですね。それで、反対してる人の気持ちも、賛成してる人の気持ちもわかる“言わない派”としての曲を作ろうと思って。もちろん、どっちにも同意できないところもあります。けど、そういう答えのないものが「音楽」っていうものじゃないの?って最近思うんですね。「スローガン」はそういう曲なんです。

志磨遼平が考える理想の音楽

——なるほど。かたや「贅沢とユーモア」では、とてもキラキラしていて非常に愉快な仕上がりのサウンドとは対照的に、歌詞には“つらいわもういや”、“絶望の深淵”などネガティヴな言葉が使われていて耳に残ります。

これはですね、昔誰かが言ってた言葉でいまだによく思い出す話がありまして。すごく辛い人や悲しい人っていうのは、辛い音楽や悲しい音楽を聴かず、それ以外の感情を書くのではないか、という話で。

——と言いますと?

ギターの話は置いておいて、僕はロックンロールというものがすごい好きで。それはどういう音楽なのかなぁと考えると、だいたいやけっぱちなんですよ。「辛すぎておもろくなってきたわ!」っていうのが僕のなかのロックンロールの定義で。「悲しいのよ……」みたいなマイナー調の曲は歌謡曲にはなれど、ロックにはならない。いくらそれがロック調であろうと。なんかヘコみすぎて面白いわ!みたいな。

——もう笑えてくるみたいな?

そう。そういうのが好きで。まあ自分が味わいたくはないんですけど(笑)。ああいう状況から生まれる「クソっ!」という感覚。逆に「今、俺は怒ってます!」みたいな怒っているだけのハードロックもやっぱり辛いんですよ。僕はそこにユーモアが欲しくなるんですね。「贅沢とユーモア」はそういう曲なんです。音楽というのはすごく贅沢で、そこにちょっとしたユーモアが乗っかれば理想の音楽で。そういうものをいつもやってるつもりなんですけど、この曲は本当にそれだけをテーマにして作った曲ですね。

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2015年という時代と音楽の関係

——個人的に「贅沢とユーモア」のスタジオライヴのビデオを見て、江戸時代の「ええじゃないか」を連想してしまったんですね。まさに「辛すぎておもろくなってきたわ!」と言いますか。

ああ、はい。

——先ほど、音楽として伝える際の線引きの話をされましたけど、それでも“最低な未来”や“時代の踊り場”といったフレーズを使わざるを得ない、みたいな皮膚感覚が強くあるということなのでしょうか?

はい。それは普通に絶対みんながあるだろうし、今普通に暮らしていてそう思わないことはないので。それを無視するような態度も、そういうことはなしにして今は楽しもうという態度も僕は好きではないんでね。最低だけれども、「でっ? 何だったっけ?」という感じで。「最低だけれども」という言葉を一言言っておかないと、しょうがないですね、今は。

——その皮膚感覚を音楽としてそのまま表現することには一線を引いてるところはあるけれど、だからといってそういった目の前の問題をまったく考えてないと思われるのにも躊躇いはある、ということですよね?

それは本当に皮膚感覚という言葉に尽きるかもしれないんですけれど。理想を言えば、“音楽が音楽だけで輝ける”。それが時代としては平和であって……時代の方が音楽や芸術より刺激的になってしまうとね。時代が面白すぎてとか、よければいいんですよ。ただ、そういうときの音楽って、時代の後をついて行かざるを得なくなるというか。例えば高度経済成長のときとかって、多分それだけで面白かったんでしょうね。どんどん発展していって、新しいものにみんなが触れて。もう何でも面白いということになったら、歌はそれの後をついていくというか。今はそれのよくないバージョンが起こっているというのが普通の認識だと思うので、へたな歌を歌うよりも、そこら中に起こっているデモだとかの方がよっぽどエキサイティングですよね。そうなると音楽はお株を奪われたも同然なので、そういうときにどうするってなったときに、それを無視はできないというのが僕の今の感覚で。ずっと持っている信念ではないです。けど、今年出すならそういうアルバムでしたね。

——2015年という今を音楽に刻む、ということですね?

そうですね。あまりそういうことは今まで考えたことはなかったんですけど。今年は、そうならざるを得ないという感じはあります。

——ところで、前のアルバムの『バンド・デシネ』に収録されている「ゴッホ」のなかで“右か左か選ぶ時が訪れたら 面倒になりそうな方に進め”と歌っているじゃないですか。自分も選択を迫られたときはそれを思いながら選んだりもしているんですけど……。

それはそれは。ご愁傷さまです(笑)。

——(笑)。志磨さんは現在、面倒な方に進めていると思いますか?

思いますね。どちらかというと事務所の人が面倒で大変だと思います(笑)。僕はただ楽しんでるだけなんですけど。事務所の人たちは毎回大人の話を通して、いろんな方にお願いをしているので。あとは、例えば僕が一人になってドレスコーズとしてサポートしてくれるメンバーを探すのか、もしくは志磨遼平名義になってソロアーティストになるのかっていう選択肢が見えてきたときに、反射的に面倒な方を探しちゃいますよね。

——はい。

じゃあ何だろうなと考えて、だいたい簡単に答えが出てくるときはまず疑いますね。僕がすぐ思いつくことはみんなも思いつくと思うので。そんな簡単に答え出えへんやろ! と思って。それでもっと考えて、毎回違うメンバーでやってやろうとか。まさかこの人とやるとは思わないだろうという人にオファーしたりだとか。そうすると、周りの人が困ります。

——(笑)。

本人は楽しいです、はい。

——わかりました。では、その『オーディション』を引っ提げて行われるツアーやライヴで志磨さんが新しく見せようと思ってるものとは、何でしょうか?

アルバムの曲を、アルバムの発売記念ツアーにも関わらずまったく違う聴かせ方をするっていうのができると面白いじゃないですか。また、今回も今までと違う人と演奏しようと思っているんですよ。

——そうなんですか!

同じ曲でも聴こえ方だったりノリだったりが変わると、それに感化されて僕の歌も変わるというのを実験したくて。いわば僕を使った公開の人体実験(笑)。そういうチャレンジ精神が一人体制になったあと何に対してもあって。みんなに「バンドって何?」、「音楽って何?」って問いたいんです。そういう風なツアーになるでしょうね。

唯一無二の存在、志磨遼平が抱える孤独

——最後にもう一ついいですか? 志磨さんはマンガや小説などにも幅広い興味をお持ちで、サブカルチャーの知識も豊富ですが、それらが楽曲制作に活かされることはありますか?

これはなかなか深い質問で。「サブとメインとは?」という話になりがちなんですけど。いわゆる「サブカルチャー」というものを、音楽とかを作って発表できる人間になりたい。そして人から注目されたい!と思ったときに、人と同じことをやっていたらいかんだろうと考えて。10代のときに誰も聴いてない、知らないような音楽や小説などに触れて悦に入っていたんです。「何聴いてるの?」って聞かれて、「えっ? T-REXだけど?」みたいな。田舎ですからその程度ですけど(笑)。そういうものを自分に肥料みたいに与えて、いつかポンと何者かになったときに、それはきっと誰とも違うものが作れるアーティストになれるのではないかと思うんですよね。

——なるほど。

そうやって自分に肥料を与えてきて、それが花開いたのかはさておき。28歳くらいのときに気付いたのが、「待てよ? そうやってきたせいで自分の感受性がすごく歪んでるぞ?」っていうのに気づいて。恋愛一つをとっても人とは違う表現をしてしまう。先ほどの「ゴッホ」の質問のように面倒な方に進むとか、それこそ「死」とかを持ち出して(笑)。みんなは「超好き!」っていう気持ちで恋愛を捉えてるのに、僕はまったく違っていたら「あれ? 人に注目されたくて始めたのに、誰も共感してくれへんやん!」ってことに気づいて。メインとサブって絶対数の数で決まるんですよ。共感をどちらが多く得られるか。だから僕は「人と違うものを作ろう!」というところから始まって、人と違うものを作れるようにはなったが、それは果たして大衆の共感を得られるのか? という素朴な疑問にぶち当たりまして(笑)。

——はい。

だから質問の答えとしては、どうしようもなく影響を受けているのでしょうね。なので、若いみなさんにはそれにぜひ気を付けてほしい(笑)。人と違う人間にはなれるが、非常に孤独ではあるということを肝に銘じておいてほしいですね。

——ありがとうございます。では、これから『オーディション』を手に取るみなさんへメッセージをお願いします。

うーん。何だろう……(熟考)。難しい質問ですね。「見ていてください!」という感じですかね……うん。「見ていてください!」という感じです(笑)。

Text:室井 健吾

PROFILE
ドレスコーズ
2003年、毛皮のマリーズを結成。2010年にメジャー1st Album『毛皮のマリーズ』でメジャーデビュー。2011年に発表したアルバム『ティン・パン・アレイ』でオリコンウィークリーチャート6位を記録。同年9月、ラストアルバム『THE END』と日本武道館でのライヴをもって突然の解散を発表。2012年ドレスコーズを結成。2014年9月、1st E.P. 『Hippies E.P.』の発売をもって、志磨遼平を除くメンバー3名が脱退。同年12月、現体制後初のアルバム『1』をリリースし、ツアーを敢行。2015年10月21日、豪華なサポート陣を迎えた4th Album『オーディション』をリリース。

OFFICIAL WEB SITE
http://dresscodes.jp/

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4th Album 『オーディション』
[初回限定盤]CD+DVD
¥3,500(+tax)
KICS-93310

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4th Album 『オーディション』
[通常盤]CD
¥3,000(+tax)
KICS-3310

これは、「M-Bug Vol.24」(2016年2月2日発行)に掲載されたインタビューです。


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