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INTERVIEW

2016/12/2

『心躍らせるサウンドトラック』Awesome City Club インタヴュー

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早くも3作目となるアルバム『Awesome City Tracks 3』をリリースしたAwesome City Club。自ら「最高傑作」と語る理由、そしてメジャーデビュー2年目を迎えて生まれ変わった彼らの“これから” とは?

ブラックミュージックを独自に昇華し、カラフルなエレクトロ・サウンドをまとった開放的なポップネスが魅力のAwesome City Club。クラウドファンドシングルのリリースや、工夫を凝らした自主企画なども手がける彼らだが、この度、前作から約1年ぶりとなるニューアルバム『Awesome City Tracks 3』を完成させた。制作には、いしわたり淳治や高橋久美子ら音楽シーンを代表する作詞家をゲストに招聘。その経緯について、さらには様々な感情が濃縮されたアルバムのテーマ、そして「プロとは何か?」「自分たちらしさとは?」について、メンバーを代表してatagi、PORIN、マツザカタクミの3人に聞いた。

 

磨きがかかった“ACCらしさ”

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——ニューアルバムの『Awesome City Tracks 3』、お世辞抜きで最高傑作だと思います。

マツザカタクミ:やっぱりですか!(笑)

——はい(笑)。全体的に開放感のあるキラキラとした音、それと対をなして描かれている甘くも切ない恋愛の歌詞が印象的でした。

atagi:今の感想、本当にびっくりしています。というのも、これマジな話なんですけど、今までは音楽的にノレる・踊れるものを目指していたんです。でも『Awesome City Tracks 3』は「心まで踊らせるものが作りたい」と取り組んだアルバムだったんです。歌詞も、1stアルバム『Awesome City Tracks』や2ndアルバム『Awesome City Tracks 2』とは一線を引いて、恋愛について表現しました。だからそのご意見、100点満点です!

——ありがとうございます! その『Awesome City Tracks 3』では、元SUPERCARのいしわたり淳治さんや元チャットモンチーの高橋久美子さん、LEO今井さんなどが作詞に携わっていますが、その経緯とは?

PORIN:元々、バンドというよりかはいろいろなことをする集合体として私たちは音楽活動を始めたので、「もっと自由にアルバムを作りたい」、「もっと周りの人を巻き込みたい」と思ったんです。私のルーツは高橋久美子さんの詞で、プロの作家さんと共作するとなったときは絶対に久美子さんとがよかった。今の自分の気持ちをより具体的に、詩的に書いてもらいたくて、初めてのノンフィクションの詞を久美子さんと一緒に書きました。

——マツザカさんは今作について「不思議と聴く人を選ばないアルバムとなった」ともコメントされていましたね。

マツザカタクミ:このアルバムの制作時期に入ってから、Awesome City Clubにいろんなことがあったんですよね。メンバーの関係性の変化、ミュージック・シーンにおける自分たちの立場……。感情がネガティヴだったりポジティヴだったり、ごちゃごちゃになっていた時期でしたね。「売れたい」とか「1stアルバムや2ndアルバムからもっと変わったものを出したい」とかいう気持ちがすごく強くなっていたんですけれど、そうしたら自分たちらしさが悪い意味で変わってしまって。それに気づいたタイミングで『Awesome City Tracks 3』を作り始めたんです。

——そうだったんですね。

マツザカタクミ:実は、このアルバムのための3枚分くらいの曲を全部ボツにして、2ヶ月ほどで新しく制作し直しました。歌詞も今回は雰囲気のいいものではなく、もう少し強い感情の乗ったものを選ぶようにして。そうやっていくうちに取り戻せた“Awesome City Clubらしさ”は、さらに磨きがかかって濃くなっていて……すごく意気込んで作ったんですけど、今作の完成後にみんなで聴いたとき、意外と素直に聴けるなあと思いました。「生活のBGMとしてAwesome City Clubを聴いてほしい」とは常々言ってますけれど、言葉もサウンドも強いこのアルバムは、逆に聴きやすいものになったと感じています。

 

時代感と心象風景

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——“Awesome City Clubらしさ”という言葉が出ましたが、それについてどのように考えていますか?

マツザカタクミ:音楽面で言えば“温度感”。それからブラック・ミュージックが基調だったり、踊れたり。メンタリティ面では、さっきPORINが言ったように“自由さ”だと。バンドじゃなく、クラブとして活動したいんですね。1個のプロジェクトを一緒にやっている人たちとして。なので“自由度が高いプロジェクト”————それもAwesome City Clubらしさかな。

——なるほど。『Awesome City Tracks 3』では、シティ・ポップを土台に様々なジャンルの音が混ざり合い構築されていると感じたのですが、サウンドにおいてはどんな点を意識されましたか?

atagi:最近、いろんな音楽を聴くにつれて、「音色の選択が実は時代感をはっきり浮き出させる要因になっている」と思っていて。それを顕著に表現するドラムやベースなどのリズムものの音選びには時間をすごくかけましたね。曲調と音像とがちゃんとマッチしていないと、聴いたとき「あの時代の音楽っぽいなあ」というイメージは成り立たないもんだと思っていたので。

——Awesome City Clubさんはアルバムタイトルの表記を敢えて統一されていますが、『Awesome City Tracks 3』以外のタイトルを今作につけるとしたら、どうしますか?

atagi:これね、本当のことを言うと、このアルバムは1、2、3のナンバリングからもう抜け出したくて作り始めたアルバムだったんですよ。だから会議でも、実際にこの質問と同じことを考えたんです。逆に聞きますけれど、何か浮かびました?

——僕は……恋愛をテーマに描かれた短編集や群像劇のようにも、あるいは「夜」という舞台がキーワードになるとも感じました。

マツザカタクミ:候補に挙がったの何だったっけ、憶えてる?

PORIN:あるよ! 『クラッシュ』。

マツザカタクミ:(笑)。他にもすげえのがあったな……サイボーグ……

PORIN:『ポップ・サイボーグ』。

マツザカタクミ:そう(笑)、ドラムのユキエちゃんが出してくれたヤバいやつ。本当に意図せず、今作は恋愛の歌詞がすごく多くて。ただのラヴ・アルバムじゃないけど、さっき言ってくれた“恋愛がテーマの短編集”っていうのも、候補としてはありましたね。

——収録曲の「Don’t Think,Feel」でPORINさんが歌う“会いたいなんて言わないから会えないなんて言わないで”という歌詞、胸に深く刺さって切ない気持ちになりました。

マツザカタクミ:ホントっすか!?(笑)。

PORIN:そういうこと言われたりします?

——いえ、言われたことはないんですけど、いつか言われてしまったらヤバいなあと。

全員:爆笑

マツザカタクミ:せつな版ですよね。いしわたりさんが作詞をされた。

——ちなみに、PORINさんは以前のインタヴューで、「4月のマーチ」はソフィア・コッポラ監督作品の『ヴァージンスーサイズ』をイメージしている、と発言されていました。それ以外でAwesome City Clubさんが影響を受けたアーティストや映画作品などありましたら、教えていただけますか?

PORIN:今回のアルバムに入っている「Vampire」って曲のイメージは、『シザーハンズ』です。

——やっぱりそうだったんですね。僕も『シザーハンズ』かなと思ってて。

PORIN:えっ、本当ですか!?(笑)。

マツザカタクミ:絶対嘘でしょ!(笑)。

——本当です、本当です!

マツザカタクミ:おべっか使ってる(笑)。

——違います! 僕も映画好きなので。

PORIN:嬉しい!

マツザカタクミ:すいません、ちょっと僕には『シザーハンズ』感は全然読み取れないんですけど(爆笑)。

ACCがメジャーで活動する意義

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——Awesome City Clubさんはクラウドファンディングシングルを2曲リリースされていますよね。atagiさんは以前、SNSでクラウドファンディングシングルについての思いなどを語られていましたが。

atagi:今、僕が思うに、全国流通という形で展開するのに向いている音楽と向いていない音楽とがあると思うんです。それで、今の僕たちは作品を全国に流通しない方がいいと。どうしてかと言うと、メジャーフィールドで活動させてもらっていながらも、ぶっちゃけてしまえば、だからって僕らは潤沢な資金があるわけでもなく、でもシングルのリリースにもそれなりの結果が求められる。バンド自身だって、数字を叩き出す音楽を作らなきゃいけないプレッシャーから、いろんな歪みが生まれやすい。音楽的地位がまだしっかりと確立できていない、確立しようと頑張る僕らみたいなバンドにとって、今、この時期はすごく慎重にならなきゃいけないんです。そういうわけで、リリース形式の選択が大事だという話をSNSに載せました。クラウドファンディングシングルは僕らの身の丈に合っていて、かつ広がりも持てる、すごくいいシステムだと思っています。

——先ほどマツザカさんが言われた「制作途中にいろんなことがあった」という言葉が気になっています。差し支えなければ、そのあたりについて教えていただけませんか?

マツザカタクミ:そうだなあ……僕らは友だち同士ではなかったし、いい意味での距離感を保ってバンド活動していたんですけど、メジャーフィールドでは一枚岩の強さがとても重要になる瞬間ってやってくるんです。塊になっているかどうかが試されるというか。「何だってよければいいじゃん」という思いがそもそも僕らにはありました。よければ別に何をしたっていい、それになんか自由でいいし。でも、それが上手く回らなくなって「Awesome City Clubって何なんだろう?」って時点に立ち返ってしまって。それこそこの部屋で12時間話し合ったり、涙、涙の状況になったり、喧嘩みたいなこともしたり、どこか部活っぽい感じになって……『がんばれ!ベアーズ』って映画が自分たちと重なってました。何も作れないときもたくさんあったし、それでも時間制約のなかで作らざるを得なかったんで、とんでもなかったよね?

atagi:「エンドロール」のレコーディングをしている最中に、僕が打ち込みで作ってたデータが入ってたパソコンがぶっ壊れて……(笑)。今からそれをレコーディングブースに入れて録りますよ、っていうその瞬間にパソコンが壊れたんですよ。

——いいことばかりではなかったけれど、それらによってAwesome City Clubとしての絆が一層深まった、ということでしょうか?

マツザカタクミ:そうだと思っています。ネガティヴなところからポジティヴなところへと変わっていったこととか、そういう痕跡がこのアルバムの各曲にあると自分は感じています。あと、ライヴがパワフルになってきたというか、エモーショナルになってきた。——Awesome City ClubさんのMVやジャケット写真、アーティスト写真などはどれもおしゃれで煌めいているのが印象的です。これらには一貫された構想などがあるのでしょうか?

PORIN:そのときによって全然違います。アルバムのジャケットとかは曲ができてから決めますね。アーティスト写真もそのときによって全然違うんです。そのときの私たちのモードなどが関係してきますね。

マツザカタクミ:でも、ジャケット写真は“あなたが思うAwesome Cityを描いてください”というお題を出して、アートディレクターの方に描いてもらっているんですよ。今回のアルバムのアートディレクターはyoshirotten(ヨシロットン)さんで、“yoshirottenさんが思うAwesome Cityを……”とお願いしたところ、実物のクリスタルを積み立てて街を作ってくれました。

——Awesome City Clubさんのテーマ「架空の街Awesome Cityのサウンドトラック」を表現する上で、意識されていることや心がけなどを教えていただけますか?

atagi:街とか風景とかっていうものを特別意識しているわけじゃないです。ただやっぱり、誰かが見たことある風景、つまり何かを想起させるものが大事だと思っていて。そして言葉とリンクする心象風景みたいなのを音で作れるか、ちゃんとマッチングするかっていうことに尽きます。特に最近作っている曲は、より個人の思いにフォーカスがいっている作品が多い。

——「4月のマーチ」や「Vampire」は、PORINさんの可愛さが光る楽曲ですが、こちらは楽曲を制作する前にPORINさんの持ち前の可愛さを武器にした楽曲を作ろうと決めて制作に入っているのですか? それとも、PORINさんの歌が入った瞬間に可愛い作品に仕上がったものですか?

マツザカタクミ:どうでしょうねぇー

PORIN:(笑)。もう、デモの段階から可愛らしいよね?

atagi:でも、僕の歌っている曲も可愛く作っているつもりですよ?

PORIN:(笑)。「4月のマーチ」とか「Vampire」って可愛いを詰め込んだもんね。

マツザカタクミ:そうですね。「4月のマーチ」は初めてPORINが歌う曲だったので、「こんな子がこういうことを歌っていたらいいんじゃないのかな?」って考えながら歌詞は作りましたね。「女の人が歌うってなったらこういう歌詞じゃない?」みたいな。

atagi :どの曲も可愛いですよ。でも。

——はい(笑)。

PORIN:爆笑

——みなさんが好きなバンドやアーティストお聞かせください。

マツザカタクミ:いつも聞かれるんですが、バンドを組んだ当初にリファレンスで聴いていたのはFoster The Peopleの『トーチズ』っていうアルバムで、この作品に影響を受けました。ただ、いつもこのエピソードを話していて飽きたので違うの言います(笑)。僕は

ヒップホップも好きなんですけど、ラップを好きになるきっかけになったのは、真心ブラザーズのYO-KINGさんが昔やっていたエレファントラブっていうヒップホップグループです。歌詞がゆるいんだけど自負心がある。可愛らしかったり、ダークだったりとかする不思議なバランスで。そこに影響受けてるところはきっとある。

——PORINさんは?

PORIN:わたしは、最近思い出したんですけど、ちっちゃい頃すごいLUNA SEAが好きでした。

——意外です(笑)。

PORIN:なんでなのかわかんないんですけど(笑)。

atagi:ずっと言ってるよねーLUNA SEA。

PORIN:もう河村隆一がチョー好きで。リカちゃん人形で遊ぶじゃないですか? その時のBGMがいつもLUNA SEA(笑)。

全員:爆笑

atagi:やな子供だね(笑) ねっとりしたリカちゃん遊びだね、それ(笑)。

PORIN:そうなんですよ。

——最後にatagiさんお願いします。

atagi:はい! 知らない人は探してもらえたら嬉しいな。ソウル・コフィングっていうバンドがいて、90年代にアシッドジャズとかの走りになったバンドです。僕はすごい影響を受けていて、アシッドジャズって聞くとオシャレなイメージあると思うんですけど、空切り音もノイズもジャズもプログレも入っている。料理で言うと和洋折衷みたいな、創作料理みたいな面白さがある。僕はその掴みどころのないところにとても影響受けていて、ぜひ聞いて欲しいな。

——さっそく買いたいと思います。

atagi:はい(笑)。

 

「自由」を求めて気づかされたこと

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——「自由」という言葉が何度か出ましたが、メジャーで活動する上で縛られたくないっていう気持ちが皆さんのなかにはありますか?

マツザカタクミ:勿論絶対あると思うんですよ。ある程度の自由が欲しいとか、そういう思考のある人がアーティストになるような気がします。そして、メジャーで活動するなかでやっぱり本気でやらないとというのは絶対あった。サポートしてくれる人のためにもそう思うし、気合いみたいな部分もあるし。例えば、「センスないから曲が作れない、俺はもう駄目かな」とか思うこともあるけど、なんかそうじゃない。やっぱ、どれだけ気合いを入れてやれるか、「こんだけ好きだからやめたくない」って思えるかとか、そういうところだったりすると思います。それってやっぱり仕事だから。どんなに出来なくても出来るまでやるっていうのがプロなんだなぁってメジャーに行って思いましたね。真剣度合いっていうか。メジャーなアーティストの人って、見えないとこでストイックで努力しているんだなっていうことを知りました。別に、メジャーだから売れているとか、インディーだから売れてないとかかっこいいとか、あんまりないです。みんな一緒。

——なるほど。

マツザカタクミ:「メジャーってかっこ悪いな」っていうのも昔はあったんですよ。でも、自分がメジャーアーティストになって、「ああメジャーってかっこいいな」っていうことを感じました。うん、プロフェッショナルになるってすごい大変だけど、求められているものが高いぶん、出来上がった時に高いものが出来るし、高いものが出来たからこそ、たくさんの人に聞いてもらえるチャンスがあるなって思う。そんなことを感じた制作期間でしたね。

——制作期間での辛さがメジャーで活動する大変さと真剣になることを教えてくれた、と。

マツザカタクミ:勿論、インディーの人もすごく真剣ですけど、今メジャーで活動していて、周りに真剣な人がいるから自分も真剣にやれる。真剣だからこそ喧嘩したり。でも、そんなに辛くはなかったです(笑)。バンドが良くなるまでの通過儀礼みたいなものだと思う。それを3rdアルバムのタイミングでたまたま僕らは体験したんだなぁって。

atagi:そういう制作期間をへて、なんか生まれ変わった感あるよね。

——今はどんな生まれ変わった姿ですか?

atagi:つるつるのたまごみたいな感じ(笑)。

PORIN:わかる。インディー時代を思い出します。

——初心?

全員:初心。

——ありがとうございます。

全員:(笑)。

マツザカタクミ:最後の言葉“初心”(笑)。

——ありがとうございます。では最後に『M-Bug』の読者に一言、3rdアルバムについてのコメントをよろしいでしょうか。

atagi:最高傑作です! 正座して聴いてください!……って、いいのかな?

全員:(笑)。

PORIN:CDを買ってもらって、ライブに来てほしいですね(笑)。

マツザカタクミ:CDを買って歌詞カード読み、聴き込んでもらえるとなんかまた違う聴こえ方、世界が見えるアルバムになっている。さっき恋愛の話が多いっていう話をしてくれたんですけど、実はその裏にあるストーリとかがあったり……。そういう風な聴き方もしてくれるとうれしいです。

Text:滝田優樹 撮影:古渓一道

 

PROFILE

Awesome City Club(オーサム・シティ・クラブ)

「架空の街Awesome Cityのサウンドトラック」をテーマにテン年代のシティポップを奏でる、atagi(Vo/Gt)、PORIN(Vo/Syn)、モリシー(Gt/Syn)、マツザカタクミ(Ba/Syn/Rap)、ユキエ(Dr)からなる男女混合5人組。2015年にビクターエンターテインメント内の新レーベル「CONNECTONE」からデビュー。1stアルバム『Awesome City Tracks』はiTunesロックチャートで1位を獲得。2016年6月22日に3rdアルバム『Awesome City Tracks 3』をリリース。

OFFICIAL WEB SITE
http://www.awesomecityclub.com/

NEW RELEASE

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3rd Album
『Awesome City Tracks 3』
[通常盤]CD
¥2,000(+tax)
VICL-64572

 


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