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INTERVIEW

2016/12/16

『多彩な才能が魅せる甘く優しい音楽』Kan Sano インタヴュー

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約3年の歳月をかけて完成されたニューアルバム『k is s』。この1枚が出来上がるまでの軌跡に迫った!

キーボーディスト、トラックメイカー、シンガーとして第一線で活躍するKan Sano。前作『2.0.1.1.』に続く最新作は、七尾旅人、Maylee Todd、Michael Kaneko、島村智才など大物アーティストをゲストに迎えた楽曲に加えて、自身のヴォーカル曲も収録した、業界大注目のアルバムだ。今回はそのアルバム『k is s』の話はもちろん、彼の音楽遍歴やサウンドプロデュース、さらにはライブでのサポート演奏について話を聞いた。

Kan Sanoを形成する音楽

——まずはKan Sanoさんの音楽遍歴をお聞かせください。

Kan:まず、小学生の5年生か6年生のころに、当時流行っていたミスチルのCDを買って聴いたのをきっかけに音楽に興味を持ちました。そして中学校に入学してからはずっとビートルズを聴いていて、実家にもともとあったピアノやギターを見よう見まねで弾きながら歌ったりしていたのが始まりですかね。高校入ったくらいからはブラックミュージックやジャズやソウル、ネオソウルをどんどん聴くようになって、バンドも組んでいました。そのあとにバークリー音楽大学っていうジャズを勉強する大学に留学しました。そして日本に戻ってきて、東京に来て今年で10年になりますね。

——大学でジャズを学んだとおっしゃいましたが、ジャズに興味を持ったきっかけはなんでしょう?

Kan:高校生の時にブラックミュージックを聴いてる時にジャズやブルースがルーツにあるんだということをなんとなく察知して、それでジャズについて学んでみたいと思ったからです。ただ、高校の時だったので周りにジャズを聴いている人も全然いなくて、地元の美大とかの軽音楽部に潜り込んで、そこでセッションとかしてジャズを学んでいました。

——大学在学中に活動していたバンドはジャズを基調としたものですか?

Kan:本当にオーセンティックなジャズバンドもやっていましたし、当時はソウライブのようなジャムバンドやジャズファンクバンドもやっていました。

さまざまな変化が投影されたアルバム

——新作の音源を聴かせていただきました。音楽的なバリエーションが豊かな作品でしたが、今作のコンセプトや、これまでの作品との違いについて教えていただけますか?

Kan:2014年に前作の『2.0.1.1』を出してから、全国ツアーをやったり、いろんなメジャーアーティストのツアーのサポートもやったり、たくさんの場所で演奏しました。その中で自分がやりたいことや考え方が少しずつ変化していったのですが、そういう心境の変化がそのままアルバムに出たのかなって思います。

——なるほど。

Kan:また、今回はソウルとかネオソウルの要素がアルバムに出ている気がしていて、ためらわずに思いきってやった感じはあります。

——制作の過程で予期せぬ方向にいったりしましたか?

Kan:そうですね。制作に2年かけたので、その2年の中で少しずつ作風も変わりましたね。あと、作品としてまとまりのあるものにしたかったので、最初はポップな曲もインストのクラブ寄りの曲もあったんですけど、全部カットして、選曲し直したりしました。僕はいろんなジャンル、いろんな音楽をやっているので、選曲は特に結構大変でした。

——今作のキモは選曲だった、と?

Kan:そうですね。でも、そこにいきつくまでの過程も含めての作品制作なので、大変ではあったんですけど楽しんでやっていました。

——ありがとうございます。そして今作では、錚々たるアーティストの方々と共演されています。

Kan:七尾旅人さんが歌ってくれた曲が自分にとってすごく大きかったです。あの曲が出来た時に今作の方向性が決まって、完成が見えました。これを軸にしてアルバムをまとめられるなって思いましたね。

——「C’est la vie feat.七尾旅人」は聴いた瞬間に心躍る素敵な曲でした。

Kan:この曲が出来るまではポップなメロディと自分のやってきたトラックとのバランス感が見つけられずに苦労していたんです。だけど、七尾旅人さんとのこの曲はいろんな要素がいい塩梅にミックス出来たと思っていて、それから「Magic!」とか他の曲が出来ていったんです。

——また、今作ではKanさん自身も歌われていますよね?

Kan:はい、自分のツアーをやったときにもっと周りに届けたいという思いが強くなっていって、それで自分で歌う機会も増えていきました。また、今回は日本語の歌詞が多いのも特徴なのですが、昔は英語の歌の方が多かったんです。それがいまは、むしろ英語で歌うことに違和感を持ち始めて、日本語の方が自然に感じるんです。世の中の動きと逆行しているかもしれないですけど、世界に向けて届けたい気持ちもありつつ、やっぱり目の前にいるお客さんや自分の周りにいる人たちに向けて届けたいって気持ちが強くなったということですかね。

——作品以外でも他のアーティストさんのツアーに参加されたりするなど、様々な関わりをおもちですが、そのなかで特に印象的なものをお聞かせください。

Kan:思い出深いものは、初めてのメジャーアーティストのツアーに参加となったCharaさんですね。あとUAさんも印象的です。お二方とも10代のころから好きで聴いていたのもあって特別でした。そして、その2人のツアーで広いステージに立って、1つの歌をみんなで共有するっていうのはこんな気持ちいいことなんだと改めて感じました。それがやっぱり自分の活動にも影響していると思いますね。

——緊張やプレッシャーはありませんでしたか?

Kan:2人とも懐の深い人なので、プレッシャーとかはあまりなくて、それよりもそこで得られる経験のほうが自分にとっては大きかったですね。

——様々なフェスに出演されていますが、特に印象深かったステージは?

Kan:ジャイルス・ピーターソン主催の「ワイルドワイドフェス」は今年いちばんの思い出ですね。2年前には松浦俊夫さんのHEXというバンドで同じフェスに出たんですけど、今年は1人で出演して、会場の熱気と雰囲気がすごくよくて、日本とは全然違うんですよね。何をやっても素晴らしいものであればそれをアートとして受け入れてくれるところがあるんです。だから、もう、その場は緊張というよりは日本を代表してそこに立っているような使命感のようなものもありました。1曲目が激しい曲だったんですけど、そこで指が壊れてもいいなって思って全力でやったら指がちょっと怪我しちゃって(笑)。

——1曲目からですか?(笑)。

Kan:1曲目からですね(笑)。終わったあとすぐに絆創膏を巻いたんですけど。あんまりそういうことないので珍しいアクシデントだったんですけど。

——我を忘れるほど楽しんだんですね(笑)。話は変わって、様々なアーティストのサウンドプロデュースを行われていますが、そこでの心がけていることはありますか?

Kan:クライアントの望むものを作りつつ、それを越えていきたいという気持ちがあるので、自分のアルバムの時とは全然違うモードでやっていますね。プロデュースの時は作家的な気持ちが強くて、自分の作品の時はもうちょっとライフワークっぽいイメージです。また、ツアーのサポートだと、ピアノってソロ楽器であると同時に伴奏楽器でもあるので、伴奏者としての喜びもあるんですよね。すばらしいシンガーであればあるほど自分も全力で支えたいと思いますし、普段の自分のライブとはまた違うモードで伴奏者としてやっていますね。

今後は“吸収”することから“発散”へ

——伴奏者として、シンガーとして、プロデューサーとして、と3つの顔があるということなんですね。それでは最後に、今後の活動に向けて一言いただけますか?

Kan:いま新しい若い世代の面白い人たちがどんどん出てきましたし、僕ももう30過ぎて新人ではなくなりました。だから、いいものを吸収する時期から、発散していく時期になったと思っていて、次の世代にバトンを渡す形で繋いでいきたいです。自分自身もそうだったように10代や20代のころに聴く音楽っていうのはその後の人生にすごく影響があると思うので、自分も人に影響を与えられる音楽を作っていきたいです。

Text:滝田優樹
Design:山本理紗

 

PROFILE

Kan Sano(かん さの)

バークリー音楽大学ピアノ専攻ジャズ作曲科卒業。2011年『Fantastic Farewell』(CIRCULATIONS)をリリースしデビュー。2012年、Bennetrhodes 名義のアルバム『Sun Ya』を Wax Poetics Japan からリリース。2013年、ジャズ・レーベルBLUE NOTE創立75周年を記念したプロジェクト“松浦俊夫 presents HEX”のキーボーディストとしてBLUE NOTE (ユニバーサル・ミュージック)よりデビュー。2014年、Benny Sings、Monday Michiru、mabanua、長谷川健一ら国内外のアーティストを迎えた2ndアルバム『2.0.1.1.』をリリース。2016年、FUJI ROCK FESTIVALや ジャイルス・ピーターソン主催 World Wide Festival (フランス)に出演。2016年12月に3rdアルバム『k is s』をリリース。

OFFICIAL WEB SITE

http://kansano.com/

NEW RELEASE

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タイトル : 『k is s』
発売日 : 2016. 12. 7 (wed.)
価格 : [CD] ¥2,300 + tax
品番 : OPCA-1031


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