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INTERVIEW

2017/2/15

『激白! アヴちゃんを産み落とした女王蜂の全て』女王蜂 インタヴュー

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音楽シーンに突如登場した異質とも言える存在感で、数多の音楽ファンを巻き込み、唯一無二のポジションを確立した女王蜂。変幻自在に変わるライヴ・パフォーマンスとヒリヒリとした爆発力をもつ楽曲は、まさに個性の塊!  その誰にも真似できない世界観と着眼点でリスナーをうならせる女王蜂のフロントマンのアヴちゃんを、アヴちゃんたらしめるものとは--女王蜂の秘密が今、ここに明かされる!

 

ライヴに出現する女王蜂の正体

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——これまでに何度かライヴを拝見させていただいているのですが、全てをさらけ出したようなMCと会場全体を飲み込んでしまうようなパフォーマンスに圧倒されました。ライヴをする際に心がけていることや、こだわりはどんなことですか?

気を付けていることは、脚が綺麗に見えることですね。

——いつもお綺麗ですよね。

ありがとうございます。ライヴ中って一瞬が長く感じたりとか、楽しすぎてあっという間に終わっちゃったみたいなことを耳にするんですけど、私にはそれがあまりなくて。的確に時間が流れてる贅沢な時間だなと思っています。ライヴをするとき以外の時間は早く感じたり遅く感じたりするんだけど、ライヴのときだけは正常な時間が流れてる気がするんです。それと、ライヴをするからにはその場を完全に制圧するっていう思いは本能的にありますね。私たちは学生のときに組んだ最初のバンドでデビューさせていただいたんだけど、最初にお客さんを呼んでライヴをしていた頃は、持ち曲が少ない中、30分時間をもらって、1500円くらいでチケット買ってもらって。そうやって友達とか先生とか呼ぶと、最初は遊びにきてくれるけど、楽しくなければそれ以降はこないし、そうなるとノルマを払い続けてバイトを頑張るしかなくなってしまうので、もらえた時間の中でどれくらい場を持っていけるかは意識しますね。

——では、お客さんと一緒に盛り上がろうっていうよりは、その場を制圧して女王蜂の存在感を際立たせるようなことに重きを置かれてる、と。

そうですね。私は「一緒に盛り上がろうぜ!」っていうのがよくわからないんですよ。だからって、上からものを言ってるつもりもなくて。女王蜂の楽曲は、私が作詞作曲をしてイメージも決めて、メンバーと一緒に編曲しているんですけど、それはもう私だけの問題じゃないんですよ。明らかに、私たちが考えたものよりもっと後ろに何かがいる気がするんです。不思議な話なんですけど、(サポート含めて)5人でライヴしていて、「今日めっちゃキマったな!」って思うときは、楽屋に帰ったときに「もう1人いたよね? 6人目いたよね?」みたいな話になるんです。

——見えない何か、が?

はい。その子の正体が「女王蜂」だと思っているんです。楽曲制作っていうのは、1人の人間を作るくらいのことだと思うので。だから、ライヴ中は人によく見られたいみたいなエゴはなくて、もっと儀式的なものかもしれないです。生贄になるっていうか(笑)。ライヴしながら何かを清める、というのが心がけていることの1つですね。あと、私たちは舞台上ではしっかりフラットな気持ちで臨むことを意識しています。お客さんの中にも、そのとき恋人とうまくいってなかったり、フラストレーションを抱えて来てる人とかいると思うんですけど、盛り上がっただけじゃ救われない人もいるし、暗いだけじゃそのままもっと悩みが深くなってしまう人もいると思うので。こちらがフラットな気持ちでライヴをするのは大事なことだと思っています。

 

ジュリ扇の羽根で残す確かな爪痕

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——ライヴでは、ファンの方がジュリ扇を振りながら楽しんでますよね。自分も初めて観たときは衝撃的な光景だったのですが、この時代にディスコティックにジュリ扇で踊るという発想はどこから生まれたのですか?

これは、ある日ライヴをしてたら客席にジュリ扇を持って踊ってる女の人がいて。私が歌っててサビになったらそのジュリ扇を投げてきて、それを拾って私がポーズを決めた瞬間、客席がどっと沸いたんです。そこから徐々にお客さんが持ってき始めて、遂に物販でも売りました(笑)。元はお客さんから始まったことなんです。これは実際、当時のジュリアナ(東京。90年代前半に一世を風靡したディスコ)でもあったことなんですけど、運営側が配ったのではなくて、お客さんが悪ノリで持ってきて配ったんですって。それと全く同じ現象が起きてますね。

——勝手にジュリ扇を持って来られたことには抵抗はなく?

そうですね。ジュリ扇は光らないし、後ろの人がちょっと見えないくらいのことで済むので(笑)。あと、ライヴが終わったあとの会場の床に「鳥を何羽殺したんだ?」ってくらいにジュリ扇の羽が落ちていて。

——わかりやすい爪痕みたいな。

そうですね。ライヴハウスの埃も巻き込めるから、一石二鳥だと勝手に思ってます。

——ライヴ中の衣装も、スタイリッシュなスーツ姿やミニスカート姿など、どれもお似合いなのですが、選ぶときはどのような基準で選ばれているのでしょうか。

グッとくるか、ですね。男の子でも女の子でも、フェチはあると思うんですよ。でも、ときにはそういうのを飛び越えて、ステージ上で着てると「アガる~!!」みたいな服があるんです。問答無用でかっこいい服、エッチな服を選んでますね。

——また、女王蜂のライヴ中のMCでは、いつもアヴちゃんが話して、他のメンバーは話さないというのを貫かれていますね。最初からこのようなスタイルだったのでしょうか?

そうですね。最初は私すら喋ってなかったです。メンバーも、ステージで喋るってことが違うって思ってるから。

——それは素が出ちゃうから?

いや、喋るほどのことないじゃないですか。

——(笑)。

だって、私たちはその日に会場を借りて、お客さんを入れてライヴをするというだけなので。「盛り上がってる~?」、「イェーイ!」とか、「これからも俺たちはビッグになっていくから!」っていうMCもすごく素敵だとは思うんですよ。でも、自分がお客さんとして行ったときに、そこにハマれる自分ではないのと、自分がお客さんだったらどう思うかなっていうのはあります。

——では、アヴちゃんがお客さんとしてライヴに行くときに、どこを注目されていますか?

ムードが途切れてないか、ですね。あとは、どれだけ振り絞っているか、という没頭具合ですね。例えば掃除してる人でも、そつなくやっている人よりは、一生懸命汗水流してやってる人の方が「おお!」ってなるじゃないですか。やっぱり何事にも没頭して、しっかりその仕事の仮面を被って働くことはとても大事だと思います。あと、ライヴを観ていて自分に余裕が出てくると、曲が生まれてきてしまう癖があって。言葉やサウンドが勝手に浮かんできて、その曲を頭の中で作曲してる内にライヴが終わっちゃったっていうのはよくあります。

 

女王蜂で見つけた新たな生き方

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——私は「鉄壁」という曲が好きで、以前ライヴで拝見させていただいたとき、アヴちゃんの身を削って本音を吐露しているかのようなリアリティのある歌詞と、全身全霊のパフォーマンスに感動してしまいました。この曲には何か特別な思いはありますか?

いや、それほどないかな。それは、裏を返すと全曲にあるって意味なんですけどね。私は幼い頃から漠然と、将来は風俗業界に勤めるんじゃないかなと思っていて。今も、ハコを借りて何時間か本気でパフォーマンスしてお客さんにまた通ってもらうようにするという意味では、風俗をしているつもりでお仕事しているんですよ。それで女王蜂を始めた高校生のときも、バンドやるか、援助交際するかくらいの気持ちがあったんですね。それでバンドをやってみたら、すっごくいろんな人から親切にしてもらえるし、ブチ切れても怒られなかったんです。バンドって殺す気でやっても怒られないんですよ。

——そうなんですか。

あと、女王蜂というバンドが、私がジェンダーとかを気にしなくていい自分の中の“抜け道”みたいな存在としてあって。そこに入ったときに、「私はこんなにスーパーリッチよ!」とか、「こんなにスタイルも抜群なのよ!」みたいな調子のいい歌は一切出てこないですね。女王蜂としての生き方を見つけた、そのときの気持ちとか目線を無意識に書いているんです。そうしていたら、いつの間にかたくさんの人がきてくれるようになったんです。「鉄壁」もニュース番組で取り上げていただいたり、今でもライヴで歌うと泣いちゃってる人が大量にいるから、すごい曲だなとは思うんですけど、泣かせようと思って歌詞書いてないので。いいこと言いたくて書いてるわけでも、「これ、売れるやろ!」と思って書いてるわけでもないから、無意識が大半を占めているかもしれない。

——普段、歌詞を書くのは苦労されますか?

全然しないです。3分とか。(小声)

——あっ、そうなんですね……(小声)

「ボイスレコーダーに入る音量で話せよ!」って感じですよね(笑)。私はよく雅楽とかを聴きながら歌詞を書いてるんですけど、歌詞書きながらスケッチとかもイメージで描いていて。そのときに、ふと眠くなって寝落ちしちゃって。しばらくして起きて紙を見たら文字がいっぱい書いてあって、それが歌詞になることもあります。

——それって、無意識のうちに書いてるということですか?

寝てる間に書いてるんです。

——すごいですね(驚)。

レコーディングのときとかに多少直すことはあるんですけど、基本的に歌詞は迷わないですね。

現実と真正面から向き合う姿勢が生み出す詞の世界観

——「折り鶴」では、“からす~なぜ鳴くの~”という童謡「七つの子」の歌詞が、「告げ口」では、“あややこやや先生に言ったろ”という誰もが知ってるメロディが使われていますが、アヴちゃんの中で童謡と狂気的な世界観の歌詞は近い存在としてあるのですか?

やっぱり「折り鶴」とか「告げ口」とか“狂気的”って思われるんですよね。そこが不思議だなと思うんです。

——自身では、いたってフラットな気持ちで作られたのですか?

そうですね。パワースポットみたいな。「あるよね!?」みたいな気持ちです。例えるなら、スーパーとかのお肉売り場って夜になると半額になってるじゃないですか。「このお肉たち、今から腐っていくんだ……」って思いますね。

——そういう見方なんですね。

だって、今日も文明が発達して便利になったせいで腐っていくお肉があれば、そこにある病院では何人か亡くなってるし、新しい命も誕生してるじゃないですか。それはただの現象でしかないんですけどね。街中のどんなに外見が綺麗なカフェや会社でも、下水道は通っているわけだし。そういうような見方は私の中で摂理としてあるんです。だからみなさんが狂気的だと思ってる曲でも、私の中では「普通に書いてるだけなんだけどなぁ」というのはあります。そこが好きって言ってくれている人もいるんですけどね。わかりやすく言うと、私の中での「折り鶴」とか「告げ口」は、狂気的というよりはアクセル全開のファストチューンみたいなイメージなんです。

——そうなんですね。

今もそういう曲はたくさん書いているんですよ。そのおかげでよくレコード倫理審査会っていう歌詞をチェックする団体の人たちに、歌詞が自殺を誘っているとか言われて怒られるんですけど。だからってコーティングした歌詞を書いて歌ったところで、何が楽しいのかわからないので。

——でも、そういう見方で日々生活していて、気分的に落ち込んだり、ネガティヴ思考に引きずられてしまうことはないんですか?

ないですね。それがフラットなので。そのぶん、恋愛したらテンション高くなったり、バンドでうまいことライヴできたら気持ちいいし。この間は志磨くん(※ドレスコーズのヴォーカル、志磨遼平)と対バンしたんですけど、「何で、すね毛剃ってこなかったん?」とか、そうやって楽しくワイワイする気持ちもありますよ。あと、『ヘルタースケルター』とか『リバーズ・エッジ』を書かれている漫画家・岡崎京子さんの作品に近い世界観が、私の中に幼い頃からフラットでありますね。

——志磨さんのお話も出ましたが、前々号ではドレスコーズの志磨さんにもインタヴューをさせていただきまして。先日は大阪で対バンされていましたが、普段は仲のいいお2人でも対バンとなると、ライバル心が芽生えたりはしますか?

ライバル心はないですね。普段からあまりそういう気持ちはないかも。でも、ライヴをするからには「その場をきちんと制圧して持っていかないと!」とは思うんですけどね。ベタな話、ライバルは過去の自分なので。私の場合、昨日までの自分のアーカイヴさえ追えないんです。自分でも何をしてたかわからないことがあるので。例えば、スーツを着てライヴをして、途中からズボンを脱いでハイヒールに着替えて、私的には「『らんま1/2』みたいじゃん!」っていう軽いノリなんですけど、お客さんは私が思った以上に受け取ったりしていて。全員が同じ気持ちで来てくれるわけじゃないんだなと毎回思いますね。対バン相手も、今日をこなす感覚でやってる人もいれば、ラストライヴくらいの気持ちで命懸けでやってる人もいてそれぞれだから、こちらが整えてもしょうがないなという感じです。でも、うちらのメンバー間の「やってやるぜ!」っていう思いのシンクロ率だけは自信ありますね。

——ちなみに、アー写やMVでは孫悟空になったりキョンシーになったりしてますが、他にコスプレしたいものはありますか?
仏様とか、そういう美しいものかな。

——仏様のモデルみたいな人はいるんですか?

形がないエネルギー体みたいなものですね。仏様のモデルって何か思い浮かびます?

——自分は紅白歌合戦に出てる美輪明宏さんを見て、その演出もあいまって仏様みたいだと思ったんです。そういう手が届かないような憧れの歌手や人物はいらっしゃいますか?

美輪さんの話でいうと、初めて美輪さんに会ったときに、舞台にお邪魔して楽屋に通していただいたんですけど、私たちを見て「まぁ!お花畑みたいね!」って言って、目を見てすごい固い握手をしてくれて。「あなたは海のように深い曲が書けるから、頑張ってね」って言ってくれたんです。そのときに、私もそういう風に何年経っても忘れられないことを言い続けられる人間になりたいと思いましたね。

——すごいエピソードですね。

あとは、セーラームーンかな! セーラームーンやりたい! 「女王蜂セーラームーンmeetsヱヴァンゲリヲン」みたいな。わけわからないですよね(笑)。でも私、歯が生まれつき全部犬歯なんですよ。体型も綾波レイっぽくて、なんか子どものまま大人になってしまったようなアニメ体型なんですよ。あと、日本のアニメーションは世界に誇れる1つの武器でもあるので、そこにタイマン張れるくらいのバンドでありたいなと思います。

獄門島一家と女王蜂の関係性

——では、5月(※去年)に発売されたシングル『金星/死亡遊戯』についてお伺いします。これは、獄門島一家とのスプリット盤としてリリースされましたが、このような構想はいつぐらいからありましたか?

一昨年末くらいなので、けっこうギリギリでしたね。これは女王蜂が対バン企画をやっていて、誰とやるのが面白いかを考えたら、「自分と対バンするのはどうか?」って閃いたんですね。それで獄門島一家のメンバーに提案したら、二つ返事で快諾してくれて。その流れでCDもスプリット盤として出すことに決まりました。

——獄門島一家は、中村達也さんをはじめ、KenKenさん、長岡亮介さんと豪華なメンバーでやられていますが、ライヴなどをするにあたって女王蜂との違いはありますか?

女王蜂は、やること自体が私にとっては大事なんです。女王蜂があるから、こういうインタヴューもさせていただいたりしているので。私にとって本当に大事なものの1つなんです。でも獄門島一家は、女王蜂が1回活動休止になって、もう復帰できないかもしれないってときに助けてくれた男の子たちなので、すごく弱いところを見られてるんですよ。泣いてるところも見られたことあるし。みんないまだに優しくしてくれてるから、獄門島一家の方が気持ち的に甘えられるかな。

 

活動休止を経て成長した女王蜂の軌跡

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——他にも、志磨遼平さんや篠崎愛さんとのコラボをはじめ、リリー・フランキーさんやミッツ・マングローブさんが司会を務める「ザンジバルナイト」(※ジャンルや形式にとらわれず、様々なアーティストが歌謡曲のカバーなどを披露するイベント)に2年連続で出演されるなど、活動休止前と比べて活動の幅が広がったように思ったのですが、何か心境の変化があったのでしょうか?

女王蜂って、バンドを始めて1年半くらいでデビューさせてもらったんですよ。楽器や歌を始めてから本当に1年半しか経ってなかったので、ライヴは自殺未遂を繰り返すような感じだったんですね。じゃないとお客さんが来てくれないと思っていたので。もう魂もすり減るし、身体もボロボロになってたんですけど、若さの勢いで乗り切っていたんです。でも、そうしていくうちに1人抜けてしまって、他のメンバーも潰れてしまって。それで活動休止して、1年間、獄門島一家として活動していく中で、女王蜂をもう一度やりたいと思ったと同時に、「音楽、できるかも」って初めて思ったんですよ。今もすごい熱量でライヴしている自負はあるんですけど、投身自殺みたいなライヴじゃなくて、もっと違うステージの美しい場所に行ける可能性が自分の中に見えて。それからいろんな人と活動できるようになりましたね。対バン企画なんて、前の自分たちではできなかったと思いますし。今、対バンしてみて、やっと「女王蜂ってこんなバンドだったんだ!」とか、「日本語喋れるんだ……」って思われてるんじゃないですか(笑)。それまではただただ恐れられていたみたいなので。あと休止前は、衣装は“武装”という意味で着てたんですけど、今は「裸になるための服を着ているんだ」と捉え方が変わったんですね。それからいろんな人と話ができるようになってきたなと思ってます。

——「ザンジバルナイト」では、昨年は中島みゆきの「シュガー」を、今年は宇多田ヒカルの「First Love」を歌われていましたが、どのようにして選ばれたのですか?

「シュガー」は私が好きな曲で、イベントに合うだろうなと思って決めました。「First Love」は、スナックで1日チーママをやるという企画があったときに歌ったら、ザンジバルナイトのスタッフに「アヴちゃん! それで行こう!」って言われて。接待で決まりました(笑)。

——マキタスポーツさんとのコラボもそういうノリで?

そうですね。「一緒にできるんじゃね? 」みたいな軽いノリです。

 

錯綜するアイデンティティが創り出す唯一無二の楽曲

——そうやって活動がオープンになっていく中で、楽曲の作り方などにも変化はありましたか?

あまりないと思いますね。そもそも私自身、普段から無意識で生きているので。あるとするなら、私は子どもの頃から女の子扱いをしてもらって生きてきて、それで実際に女王蜂をやってみて「女の子だよね」って確認しあったり、でもたまに「男の子だよね」とも思ったり、すごく錯綜していて。スーツを着たら男装と言われるし、ミニスカ履いたら女装って言われるし、「じゃあ私のアイデンティティって一体どこなんだろう?」とかをすごく考える、そこの感情の揺れ動き方で最近は曲ができるようになってきましたね。昔は狭い視野でしか周りが見えてなかったけど、最近はドローンのように、上から見下ろしながら人の生活を覗くみたいな、俯瞰的な視点も持てるようになったんです。バンドがブラッシュアップされるごとに、私自身の中身とか目線も変わってきてるんだなというのを感じています。

——「金星」も、ダンサブルでファンキーなサウンドと、今までとの変化が垣間見えましたが、これも新たな視点を取り入れて作られたのですか?

いや、根っこではそういう曲が好きなんですよ。メンバー全員、心はギャルなんで(笑)。「イェーイ! かかったよー!」みたいな。やっぱりEXILEとか浜崎あゆみとか問答無用でアガるじゃないですか。なのにそれを揶揄するアンチとか、嫌いって言う人の気持ちがわからなくて。誰もが知ってる曲をいいなって思いつつ、誰も知らないようなアーティストの曲も好きになったりとか、自由でいいじゃないですか。あと、昔はクリックを聴いて演奏とかもできなかったんですけど、今は打ち込みも入れられるようになってきたので、そういうアガるイメージを形にしやすくはなってきたなと思ってます。

——そういうアガる音楽が好きでも、初期の頃は自殺未遂のようなライヴで、激しいパフォーマンスをせざるを得なかったんですね。

仕事でしたからね。若い子が、いきなり「これでご飯が食べられます」っていうのを成立させるためには本気でいくしかなかったので。うちらの悪ノリにお客さんが楽しんで来てくれるなんて全く思ってなかったから、余裕なんてなかったし、思いっきりぶつかっていくしかなかったですね。今も多分ぶつかってるんだと思うんですけどね。やっぱりどんどん強くなってきたから、いろんな曲調の曲ができるバンドになったのかなと思います。でも、私たちのファンは「変わってしまった」って思うのかな?

——むしろ、女王蜂のいろんな面が見られたと思うのでは?

そうですね。今でもライヴでは「鉄壁」とかも歌うし、昔の曲もやるし。

——そうしていろんな面を見せられるようになった今、ご自身で女王蜂にジャンルをつけるとしたら何ですか?

よく「ロックバンド」と言われることもあるんですけど、私たちはロックをやってるつもりは微塵もないです。私の思う「俺たちはロックバンドだぜ!」っていうようなロックは、テキ屋の兄ちゃんみたいに裏に強い人がいるみたいなことだと思うんですよ。代々受け継がれてきたロックのスピリッツみたいな(笑)。そのスピリッツをものにしてかっこいい作品に昇華できていればいいんですけど、ロックバンドだから打ち上げヤバいとか、ロックバンドだから私生活ハチャメチャでも才能あるからいいとか、そういうのは嫌なんですよね。なので、ロックはしてません。ポップです!あとは、ドラマかな。

——演技もされてますからね。

はい、させていただきました。あと、ライヴや音楽って“時価”が決まるんですよ。「今ヘボかったらもう次はない」という気持ちで、今私はイケてるかイケてないかっていうのは自分の中で常にジャッジしていますね。ロックってイケてないときも、「あれはあれでロック」みたいに言われるじゃないですか。そういうの聞くと「甘えんな!」って思いますね。

 

何よりも女王蜂を大切にするアヴちゃんが見据える未来

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——今のアヴちゃんを作り上げた音楽のルーツが気になります。邦楽と洋楽で1組ずつ教えてください。
中島みゆき嬢は特別ですね。もうお母さんのお腹にいるときから聴いていて、大好きです。あとは、洋楽? そうだなぁ……。フジコ・ヘミングはよく聴くけど、洋楽って感じじゃないもんね?(笑)。

——普段は邦楽中心なんですか?

そうですね。洋楽だと最近はジャスティン・ビーバーを聴きながら寝てることはあるけど、それはバンド内で今流行ってるから聴いてるだけで、私を構成してるとなると……(熟考)。

——邦楽だけでもいいですよ?(笑)。

答えられなくてごめんなさい! あとは、やっぱり『セーラームーン』とかかな。答えになってないですけど。『セーラームーン』で「乙女のポリシー」っていう曲は、聴いたら元気になる曲ですね。あと、2.5次元の『セーラームーン』のミュージカル、略してセラミュっていうのがあるんですけど、私は今まで観に行ったライヴの中でそれが1番よくて。もうすごすぎて泣いちゃって。演者さんたちが、カラコンとかなしで目が完全にセーラームーンになりきっていて。舞台上の全員の目の中がキマってたんです。それにとても感動しました。言ってしまえばミュージカルって「ごっこあそび」じゃないですか。バンドも、実際に起きてないことをやってるという意味では同じだと思っていて。だって悲しい歌を歌ってるとき、歌ってて悲しくなることはあっても、実際にその場であったことを歌ってるわけではないですよね? 「ごっこ」って言ってしまうときつい言い方だけど、演技じゃないですか。それが、『セーラームーン』のミュージカルを観たときに、「本気や!」って思って。「頑張って!」とか「助けて!」って『セーラームーン』に対して心から思ったんです。

——はい。

それで、もしかしたらこういう気持ちを女王蜂ファンは私たちに対して思ってるんだろうなと感じたんです。そのきっかけがセラミュだったので、それがずっと心に残ってますね。初めて女王蜂を観たような感覚に近いと思います。なので、中島みゆきと『セーラームーン』です。あと、中島みゆき嬢のライヴやセラミュを観てると、自分の代わりに戦ってくれてる人っていう感覚がありますね。

——それは同じ音楽というジャンルで戦っているということですか?

いや、例えばアニメやマンガの主人公で、いきなり羽が生えてそこら辺でバトルしてるみたいな感じです。そんな風に自分の代わりに戦ってくれて、自分の代わりに歌ってくれるアーティストとか作品が好きですね。

——自分に似たものを感じてる?

そうかもしれないですし、私もそうでありたいっていう気持ちもあります。あと作品って、自分の中の煮こごりとか、腐りかけてるものとかをぶつけてもいいんですよね。だから作品を作る、ライヴをするということを決めた人は天才だと思っていて。それはすごい発明だと思うので、その発明をこれからも続けて、次の世代へバトンを渡せるように頑張っていきたいと思います。

——では最後に、非常に楽しみな次回作の構想についてお聞かせください。

すごくかっこいいと思います。私はこれで女王蜂はまた、素敵なところに行けるんじゃないかと思っています。もちろん、新しいことにも挑戦しているので、楽しみに首を洗って待っていてください。

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Text/Design/Photo:室井 健吾

Live Photo:釘野 孝宏

PROFILE
女王蜂
アヴちゃん(Vo.)、やしちゃん(Ba.)、ルリちゃん(Dr.)、ひばりくん(Gt.)からなる4人組バンド。2009年神戸で結成。2011年メジャーデビュー。メジャー1stアルバム『孔雀』に収録されている楽曲「デスコ」が、映画『モテキ』のテーマソングに抜擢され、注目を集める。2012年5月にメジャー2ndアルバム『蛇姫様』を発表後、ギターを担当していたギギちゃんが脱退。同年12月、活動休止を発表。翌年2月のライヴ『白兵戦』をもって活動休止に入る。約1年の休止を経て、2014年2月のライヴ『白熱戦』にて活動を再開。2015年にはメジャー3rdアルバム『奇麗』を発表。2016年5月にはヴォーカルのアヴちゃんが、中村達也、KenKen、長岡亮介と組んでいるバンド、獄門島一家とのスプリット盤として『金星/死亡遊戯』をリリース。2017年2月には、ドレスコードを仮面とする単独公演『仮面の宴』を5年ぶりに開催予定。また4月からは自身最大規模の全国ワンマンツアー2017「A」の開催も決定。

LIVE INFORMATION

女王蜂 全国ツアー2017 「A」

2017.04.06 (木) 神戸VARIT.
2017.04.08 (土) DRUM LOGOS
2017.04.14 (金) なんばhatch
2017.04.29 (土) 広島セカンドクラッチ
2017.04.30 (日) 岡山IMAGE
2017.05.06 (土) 札幌PENNY LANE 24
2017.05.12 (金) HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
2017.05.13 (土) 柏PALOOZA
2017.05.25 (木) 京都磔磔
2017.05.27 (土) 高松DIME
2017.06.02 (金) 仙台darwin
2017.06.03 (土) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
2017.06.11 (日) 金沢AZ
2017.06.25 (日) 名古屋BOTTOM LINE
2017.07.02 (日) Zepp DiverCity TOKYO

料金:4,000円 (税込/別途要ドリンク代)

OFFICIAL WEB SITE
http://www.ziyoou-vachi.com/

RELEASE 
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女王蜂 VS 獄門島一家 スプリット盤
『金星/死亡遊戯』
[通常盤]CD
¥1,500(+tax)
AICL-3109

これは、「M-Bug Vol.26」(2017年2月2日発行)に掲載されたインタビューに、未公開部分を加えたものです。


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