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2016/1/25

愛と希望、どちらを捨てるか。~映画『Mommy』感想~

どうも。
先日降った雪で、転ばないように細心の注意を払っていたにも関わらず派手に転んだ室井です。
そんな全てのやる気を削がれるような日は映画を観るに限る。

ということで、今回は先日観た映画『Mommy』の感想を書こうと思う。

『Mommy』は、俳優としても活躍するカナダ人、グザヴィエ・ドラン監督の作品。
彼の監督デビュー作『マイ・マザー』はカンヌ国際映画祭で上映され、20ヶ国の映画会社
に売却された。その後発表した『胸騒ぎの恋人』、『わたしはロランス』もカンヌ国際映画祭で上映され、2013年には『トム・アット・ザ・ファーム』でヴェネツィア国際映画祭の国際批評家連盟賞を受賞。今作『Mommy』は、カンヌ国際映画祭で審査員を受賞した。監督だけでなく、脚本、編集、ときには主演まで自ら務めることもある。作品だけでなく、その出で立ちもファッショナブルで美しいところから、人呼んで『美しき天才』とも称されている。

ネタバレになるのであまり細かくは言えないが、今作のあらすじを簡単に紹介すると、物語の舞台はカナダ。そこでは、発達障がい児の親が、経済的困窮や身体的、精神的な危機に陥った場合は、法的手続きを経ずに養育を放棄し、施設に入院させる権利を保障するという「S-14法案」が可決されたという設定から始まる。

そこで登場するのが、この物語の主要人物スティーヴと母親のダイアン。スティーヴは、ADHD(注意欠如・多動性障害)を患っており、1度キレると手に負えなくなって実の母を絞め殺す寸前までいってしまう。その言動も同じく過激で、彼は会う人会う人を怒らせ、たびたび喧嘩に発展してしまう。3年前に父親を亡くしてからはその症状が悪化して施設に預けられていたが、施設でも問題を起こし、自宅に引き取ることになる。それでも母のダイアンは、スティーヴを優しくて才能のある子と愛情をもって接しているが、スティーヴが次々に起こす問題を近所に住むダイアンの友人、カイラとともに必死に解決しようと試みるが……。

よし、ここら辺で止めておこう。
ここまで読んで観たくなったら今すぐレンタル店へGo!
逆にこういうヒューマンドラマを扱う映画は、興味ないぞっていう人も、普段自分の観ないジャンルの映画を観るのもいい勉強になると思うので、そのきっかけにしてもらえればと思う。

さて、唐突だがこの映画を二文字で総括するなら「人間」だろうか。セリフや、キャストの表情、シーンにマッチした音楽から「人間」の内面をえぐり出される。
そして何よりすごいのは、映画制作のことを全く知らない素人が観ても、この監督はすごいな、天才だなとひしひしと伝わってくるところだ。演出やストーリー展開、細かいセリフや表情などまさに「センス」の塊。ストーリーを追いつつ、ストーリー以外のところもこれほどまでに注目し、感心しながら観た映画はこれが初めてだった。

もちろん、キャストの演技もそれぞれ目を見張るものがあって(とくにクライマックスでダイアンが必死に涙を堪える場面はぜひ注目して観てほしい)、自分は劇場で観たのだが、完全にその世界に入り込んで、登場人物の感情が乗り移ったかのように、喜怒哀楽をともに感じながら観ていた。
大まかなテーマは母と子の愛という、他の映画でも取り扱われる普遍的なテーマなのだが、この映画はそれを通り越して、観ている者に“人間としての在り方”を考えさせてしまうパワーがあり、本質を迫られる名作。

この映画のキャッチフレーズには、「愛と希望、どちらを捨てるか。」とあった。この作品での「愛」は、親子愛を優先して、この先どんなことを息子がやらかしても育て抜いてゆくこと。「希望」は、施設に入院させて、ADHDを治すということだと考えた。
もちろんどちらも捨てたくないのが本望なのだが、この作品はそんな悠長なことを言ってる場合ではない状況に陥り、究極の選択を迫られる。
まさに苦渋の決断。果たしてダイアンたちはどちらを選ぶのか。決断までの苦悩と、その後のエンディングにはぜひ注目してほしい。

僕もこの学校への入学を決意するまで相当悩んだ。果たしてこの決断が正解だったのかは、まだわからないが、僕も劇中のダイアンたちも、どちらの道を選んだとしてもその先に光があると信じて生きていければ、と切に思った。

そして、僕には新たな目標が出来たのだ。いつかこの素晴らしい名作を作りあげた、グザヴィエ・ドラン監督にインタヴューする、と。

向かって左がダイアンとスティーヴ。右がグザヴィエ・ドラン監督

向かって左がダイアンとスティーヴ。右がグザヴィエ・ドラン監督


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