M-BUG take free

音楽フリーペーパー「M-Bug」オフィシャルサイト


BLOG

2016/7/29

パンツ大使の熱

何てったって、パンツの気分。下着じゃありません。そう、ズボンのこと。もっと言えば、ワイドパンツのこと。

女性らしいボトムスといえばスカート。歩くたびに、風が吹くたびに、ひらひらと揺れる。かわいい。それに、脂肪のつきやすい女性のお尻や太ももを痩身主義の昨今において隠すかつ飾るという、大変道理にかなった衣服だとも思うんです、スカート。

この春夏も、スカートをいくつか購入。そのうちのひとつは真上からアップで撮ったと思わしき花のプリントが表と裏に施されているのであって、とても派手。そもそもそれは花に見えず、宇宙望遠鏡がキャッチした超新星爆発と言うのが的確。ウエストには色とりどりの石が埋め込まれている。こんな、すごいスカート、でもかわいいんです。

IMG_1079

女性として生まれたからには、女性だけの特権を大いに行使しなくちゃ、つまらないじゃないの。そう思うからこそ化粧品しかりワンピースしかり、男性が足を踏み込めない、欲しがれば底なし沼のちょっと怖い世界を形成するものが大好きで、ところが今春から男性だって履くパンツというものに酔ってしまい、今日までに結構購入した。そのほぼすべては足首まで長く、肌に張りつかないワイドなパンツ。「ワイドパンツはスタイルを悪く見せるんじゃない?」と躊躇する人もまだたくさんいるでしょうけれど、スカートから心変わりをした私の見識では、ワイドパンツよりもスタイルをよくするボトムスはありません。

IMG_1076

理由を挙げると、まずシルエットの本当に計算し尽くされているそれの最近多いこと。そのおかげで、太ももは逞しく、膝下はほっそりとしたアンバランスな足だって、均等の取れているように私たちに想像させてくれる。足のいちばん痩せた部位を出せば何となく細いスタイルに見えるのは確かですが、それをふくらはぎまでの丈のスカートで実行した場合、合わせるシューズ次第で頭からつま先までの体型が悪く映ります。その点、ワイドパンツはパンプス、スニーカー、サンダル、ショートブーツ……足元を選り好みしません。いつだって何だって、綺麗なボディシルエットにしてくれます。

次に、ウエストの位置が高く、くびれから下へと流れる作りにできていること。「ハイウエストのスカートもあるじゃん!」と思われたかもしれませんけれど、ボリューミーなハイウエストスカートでは足を隠す以上に裾の広がった印象を与えがちで、全身とのバランスがあべこべになり、おしゃれに着こなすには相当のセンスが必要です。またタイトなハイウエストスカート、これは下半身のラインを見事に出すため、ふくよかな人はよりふくよかに、スリムな人はよりスリムに私たちの目を感じさせて、でもスリムな下半身に着けたところで、やっぱりここでも全体的バランスが問題となってくる。同じくタイトなトップスを合わせると身体の線が露わになりすぎてしまい、貧相に見える他にも欠点部位などを強調する、あまりかっこよくない姿ができあがります。反対にオーバーサイズのトップスを考えたとき、そのオーバー度合によっては上半身の体積と下半身の体積とにちぐはぐさを認めさせることとなり、難しいんですよね、タイトなハイウエストスカートも。ワイドパンツはトップスどれでもいけちゃう! ほどよいその下半身のボリュームが、ひとりひとりの多様な上半身までも整然と映るようカヴァーします。話がやっと戻りますけれど、ウエストの位置が高いワイドパンツはお腹のくびれ、そこからお尻以下へと続く女性らしい曲線が抜群なのです。

痩せているように見せるファッションをひたすらに模索したり購入させたりする雑誌に踊らされて、似合わない服を似合わないとも気づかず過ごすのは嫌。みなさんも、本当のところはそうでしょう? ショップでたくさんのアイテムを試着し続けては吟味する情熱や、一般受けしないアイテムにあえて挑戦する勇気、そして絶妙に足し引きされたコーディネートのバランス、おしゃれ感覚はこれらを大切にすればするほど育つと思う、なあんて生意気な口をきけるほどのファッションにおける知識も洞察力も会得できていませんが、実にお節介ながらみなさんのお役に立てればと、ここまで私はワイドパンツ大使として綴りました。これ読んで「ちょっと考えとくか……」ってなってもらえたら、ライター冥利に尽きるってもの!

しかし何てったって天邪鬼な性分。スカートに対する思いが今、じんわりと湧き上がるのだった。表参道ヒルズのとあるセレクトショップの秋冬コレクション展示会にお呼ばれされていたのでついこの前伺ったのだけど、引き続きトレンドのワイドパンツには目もくれず、全体とのバランスが取りにくいとここでひとり力説したにもかかわらず、予約した5点のアイテムのうち唯一のボトムスはロングスカート。金色の。パンツ大使はまたしてもスカートにお熱。しかも金色の。我ながら不埒で困るね。でも転向に転向を重ねる関心のベクトルに翻弄されるのが気持ちよいと感じるのも間違いなくあり、私は結構いい加減に生きられるようになれたみたい。まるで職人のように「これはこうする! あれはああしちゃ駄目! この道から外れずに行けば、いつしか究極体になれるから!」っていうサディスティック兼マゾヒスティック生活を強いていた昔が嘘のよう。肩の力が抜けるってこれを指すのかしら。ああ、あのまま変わらなければ、今頃どうしていたの、私は何になれていたの……なあんてね。明日が来れば忘れられる孤独に頬杖で笑ってみせる。ぴかぴかスカートの入荷連絡が楽しみです。

 

溝部尚子


記事一覧

PAGE TOP