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SPECIAL

2013/7/3

『CD&DLでーた』編集部 大窪さんインタビュー

 

5月上旬、音楽情報雑誌『CD&DLでーた』の編集部から大窪由香さんにご来校いただきました!

地元の愛媛県から大阪コミュニケーションアート専門学校のある大阪へ行き

さらに出版社に入るという志をいだいて上京された大窪さん。

やりたいことをしたい!

夢を追い求めた波乱万丈な人生。

果たして、大窪さんの言う“やりたいこと”とはなんなのでしょうか?

その半生を語っていただきました。

 

『CD&DLでーた』編集部 大窪さん 現在はフリーで活躍されています

『CD&DLでーた』編集部 大窪さん
現在はフリーで活躍されています

 

——ご出身が愛媛県ということですが、大阪へ行かれるとき、親御さんの反対はなかったですか?

「なかったです。実は高校が進学校だったので大学受験組が多かったのもあり、私は地元の短大を受験して合格をもらっていました」

 

——ということは、短大を蹴って大阪コミュニケーションアートに入ったんですね。

「はい。その短大の卒業生は地元で就職する人が多くて。でも私は、その頃から編集者になりたかったので親に相談したところ“今まで受験勉強も頑張ってきたんだから、いいんじゃない?”という感じでお許しをいただいて大阪に行きました」

 

——相当ご理解のある親御さんなんですね!

「そうですね、ありがたかったです(笑)」

 

——そもそも、なぜ編集の仕事をしたいと思ったのですか?

「子供の頃から本が好きだったんです。編集という職業を知らないときから本を作る人になりたいと思っていました。きっと皆さんそうだと思うんですけど、物心ついてから最初に出会う編集者って『サザエさん』に出てくる“ノリスケさん”なんじゃないかなと思います!」

 

——確かに!

「サザエさんの家でゴロゴロしながら伊佐坂先生の原稿が上がるのを待つノリスケさんの姿を見て“出版社の人って昼間は寝てるんだ”って思ってました。でも実際になってみたら全くそんなことはなかったですね(苦笑)」

 

——大阪コミュニケーションアートでの経験が役にたったことは何かありますか?

「私が入った頃は編集にMacが導入されたばかりで、今と制作過程が違ったんですよ。だから役にたったことはあんまりないですけど、卒業まで続けたことで自信がついたのでよかったです」

 

——ちなみに、今と昔で制作過程はどう違うのですか?

「例えば、昔は“写植”という文字のフォントや級数や行送りを学ぶ授業があったんですけど、今はDTPになったのでその授業は無くなりました」

 

——在学中に研修には行かれたんですか?

「約1ヶ月間、1社のみいきました。基本的に大阪コミュニケーションアートの研修は大阪の編集プロダクションなどに行くんです。でも先生に“どうしても東京に行きたい!”と言ったら、先生が東京での研修先を見つけてきてくれたんですよ」

 

——じゃあ1ヶ月ずっと東京に?

「はい。愛媛から東京に出て来た友達の家に泊まらせてもらっていました。そのときは扶桑社の『Caz』という女性誌の編集部で1ヶ月間研修させてもらいました。のほほんとした編集部でしたね」

 

——研修ではどんなことをしたんですか?

「最初は郵便物やアンケートハガキの仕分けを手伝ったりしましたね。あと、取材に連れていってもらったり。他には “間違い探しといて”って校正紙を渡されたりなど、色々な体験をさせてもらいました」

 

——もちろんお給料は出ないんですよね?

「はい。その代わり“交通費も給料も出ないんだから、働いたぶんのご飯ぐらいは食べていけ!!”って編集部の皆さんが毎晩のように奢ってくれました(笑)」

 

——就職するまでの道のりについて、お話を聞かせてください。

「これは、専門学校に入って良かったと思う理由のひとつなんですけど、東京に出て仕事がしたいということを先生にずっと言っていました。でも卒業しても就職先が決まらなかったので、とりあえず東京に出てきたんです。そうしたら、先生の知り合いの編集プロダクションが人員募集をしていて、“受けてみれば?”と連絡をくれて、面接に行ったらバイトで受かったんです。自分はすごく運が良かったと思います」

 

——バイトから社員になったんですか?

「はい。皆さんも学校にいる間に出会う人たちを自分の人脈としてどんどん活用するといいですよ」

 

——上京してからは、どのくらい経ちますか?

「約20年になりますね。『CDでーた』に入社するまではいろんな出版社を転々としていました」

 

——どんな出版社にいらっしゃったんですか?

「1番最初は編集プロダクションでベネッセの『こどもチャレンジ』の教材の編集に携わっていました。編集プロダクションはいろんな版元から依頼を受けて編集を担当します。なので、隣の部署では女性誌を作ってるとか、ジャンルは様々でした」

 

——1つのジャンルだけ編集するのではないんですね!

「そうですね。でもやっぱり教材ではなく、雑誌の編集がやりたかったので、2年半で辞めました。それで、上司の紹介で角川書店が出している女性誌の企画で、海外通販の雑誌を今度出すから制作チームに入らないか? と誘われたので、そのチームに入り、今度は編集プロダクションとフリー契約を結びました。でも、期間限定の企画だったので、制作が終わってしまった後は美容業界誌を制作している出版社に就職しました」

 

——また全然違ったジャンルですね!?

「はい(苦笑)。美容師を目指している方が読むような雑誌でした。そこでしばらく編集の仕事をしていたのですが、前の編集プロダクションの先輩が、女性誌の担当に移りまして、声をかけていただいたんです。今度、音楽のページの担当者が辞めるからうちのところに来ない?  と。次はその女性誌の編集部に入りました。なので、『CDでーた』に入るまで8年間かかりました」

 

——苦節8年!

「長かったです!(苦笑) でも、美容や料理など幅広く担当してきたので知識も豊富になり、自分の身にはなりましたね。なので、そこは大きいと思います」

 

——そこまでして編集をやりたかった音楽雑誌の魅力ってなんですか?

「自分が10代の頃、ずっと読んでいたっていうのもあるのですが、今ネットに取って代わられて、紙媒体はいらないんじゃないかと言われたりもしているんですけど、やっぱり紙がいいですよね。切り抜いてストックしたりできるじゃないですか。そういうことが楽しいなと思うので」

 

——『CD&DLでーた』の特色ってなんですか?

「例えば『ROCKIN’ON JAPAN』さんとか『音楽と人』さんとは違って、オールジャンルを掲載しているのが特徴です。アイドルもいるし、ゴリゴリなロックバンドもいるし、ヴィジュアル系もいるし、そういうのが一緒になって並んでいるところというか。やっぱり『ROCKIN’ON JAPAN』さんとか『音楽と人』さんの編集者だったら、好きなアーティストへの取材や、その雑誌のカラーというのも大切にしてますよね。『CDでーた』みたいな音楽情報誌は、もちろん各編集者に好みのアーティストはいるのですが、それはとりあえず置いといて、今どういうものが注目されているのか、そういう観点で切り取っています。いろんなジャンルのものが読めるというか。各編集者が思っているのが、例えばAKB48が表紙だったら、たくさんの人が手に取ってくれるじゃないですか。で、そのファンの人たちがパラパラ雑誌をめくった時に、思いがけないアーティストの出会いがあると嬉しいですね」

 

——ちなみに洋楽も掲載されているんですか?

「洋楽は載っていないですが、この一冊で日本の音楽シーンを網羅できます!」

 

——まさに“情報誌”なんですね。仕事をしていて気付いたことはありますか?

「人脈ってとても大事だなって。ここまでやってこられたのは先輩方のおかげですからね。知識も豊富になりましたし、私自身人間関係を大事にしつつ頑張ってきたので、そうでなければ誘ってくれるなんてことはありえなかったと思うんです。信頼してくれていたからこそだと思います」

 

——アーティストさんの取材に行くときに心掛けていることってありますか?

「『CD』は音楽情報誌なので、今回どんなものがリリースされるのか事前に調べて、その音を聴いて、どんな風にページを作っていくのか整理していくのが大事です」

 

——いま音楽業界が下火になっていると言われていますが、これからどうやったら盛り上がっていくと思いますか?

「そこはみんな試行錯誤して何かないかと模索していると思うんですけど。例えば新しいメディアだと、最近柴咲コウさんの電子書籍っていうのがiTunes限定で発売になって、インタビューの導入部分が動画として流れたり、PVや、オリジナルの音楽に合わせて柴咲コウさんの詞が流れたりするんです。こんな風にメディアミックスできるんだったら、これは面白いんじゃないかなって思うようになりました。私はもともと電子書籍否定派だったんですよ。“やっぱり紙媒体だろ!”って(笑)。でもこんな風にメディアも発展してるから、必ず音楽に還元できると思います」

 

未来の後輩達の相談に真剣に答えてくださいました

未来の後輩達の相談に
真剣に答えてくださいました

 

——話は変わりますが、ご自分の性格を一言であらわすと何ですか?

「先輩に言われてなるほどと思った一言は、“あんたにはさわやかな野心がある”ですね(笑)」

 

——さわやかな野心!?

「野心を剥き出しにしているような感じではないんですけど、自分がやりたいと思ったことは、地道に実現させているところがそう言われるのかなと思います(苦笑)」

 

——そんな大窪さんが影響を受けたアーティストを教えてください。

「学生の頃からBUCK-TICKが大好きで。あとはチェッカーズも! チェッカーズのメンバーは洋楽マニアな人たちなので、その影響でチャック・ベリーとかエディ・コクランとか、50年代から60年代の音楽を聴き漁ってましたね。そんな中チェッカーズが解散した時は、ものすごくショックでした。チェッカーズってずっとバンドを続けることが憧れだってメンバーは話していたのに、急にバンドが解散の方向に向かっていったので。もう解散はトラウマです(苦笑)。でもBUCK-TICKは解散しないって確信してます!」

 

——BUCK-TICKさんの25周年記念のアーティスト本を作られたとお聞きしましたが、どれくらいの期間を要しましたか?

「企書を事務所の人に提出してから1年かかりました」

 

——1年も!?

「本当は25周年が始まる前に“こんな本作りませんか?”って提案していたのに、25周年が終わる頃に“そういえばあれやろうか?”みたいな感じで決まったんですよね(苦笑)」

 

——で、発売したときにはもう25周年は終わっていた?(苦笑)

「はい(苦笑)。決まってからは2ヶ月ぐらいで完成したんですけどね。ただ、それまでに信頼関係を築いたり、色々とやらなきゃいけないことがいっぱいあったたので大変でした」

 

——その2ヶ月間はどのような生活を?

「1日2時間ぐらいしか寝る時間がなくて、明け方にタクシーで帰ってました。よくタクシーの運転手さんに“好きじゃないとやれない仕事ですよ〜”って愚痴をこぼしてました(苦笑)」

 

——大変そうですね! 編集者には体力も必要なんですね。

「体力はもちろん必要なんですけど、覚悟がないと続かない仕事です。とはいえ、6月で会社を辞めるんですけどね(苦笑)」

 

——音楽雑誌の編集という仕事のやりがいや、誇りを教えてください。

「例えば、デビューから取材をしていたバンドが日本武道館で公演した、というのを聞くと嬉しいです」

 

——お母さんみたいですね(笑)

「そうですね(笑)。でも本当にそれぐらい嬉しいです」

 

——音楽業界に入る上で、必要だと思うことはありますか?

「物事をフラットに見る目ではないでしょうか。わたしはBUCK-TICKが好きで、担当になるっていうときにファンクラブをやめたんですね。それはちゃんといち編集者として向き合わないといけないと思ったので、“BUCK-TICKが大好きなファン”ではなく、“BUCK-TICKを担当させていただく編集者”になることにしたんです。例えば、去年まで音楽雑誌の表紙をやれていたけど、今年は売り上げが落ちているから表紙は無理! というシビアなジャッジをしていかなきゃいけない瞬間がどうしてもあったりするんですよ」

 

——厳しい世界なんですね。

「はい。明日どうなっているかわからないようなところもありますので」

 

——ところで、大窪さんって話し出すとなかなか止まりませんよね?(笑)

「そうですね(苦笑)。在学中はいろんな先生と話すのが好きでしたし」

 

——あまり怒ったりされないようにも見えますが?

「怒らないです。実際は怒っているんですけどね(苦笑)。でもやっぱり怒ったその先を考えなきゃいけないじゃないですか。なので、怒っても仕方ないかなと」

 

——1ヶ月のうちで休みってどのくらい取れるのですか?

「音楽雑誌なので土日にライヴがあったりだとか取材が入ることもあるので、丸々1日休みっていうのはあんまりないかもしれないですね」

 

——ストレス溜まりませんか?

「あんまり溜まらないですね。気づいてないだけかもしれないですけど(苦笑)。そういうときは食べて解消します」

 

——他には何か?

「何にも考えずに無心になるためにお菓子を作るっていうのはあります。実家がパン屋なんですよ。日常的に実家で見ていたものなので、全然自分が女子っぽいとか思ったりとかはないんですけど(苦笑)」

 

——どのくらいの頻度で何を作られるのですか?

「凄いハマってたときにはフルーツケーキを毎週末作ってたりしてました」

——失礼ですが、ご結婚はされていますか?

「してないです」

 

——音楽業界で働くと婚期を逃すという話を聞いたのですが、実際のところどうですか?

「音楽業界だけでなく出版業界もそうかもしれないです(苦笑)」

 

——周りの方もしてない方が多い?

「多いですね。でも編集部にも因るかもしれないです。女性の多い編集部でしたら割と結婚してたりしますし」

 

——大窪さん自身結婚願望は?

「人並みくらいだと思います。すごくしたいだとか結活しなきゃって口では言ってますけど、特に何もしてないのでそんなくらいなんだろうなって思ってます」

 

——でも結婚して子供が生まれたらお仕事できなくなってしまいますよね?

「そうですね。結婚して子供を生むと事務的な部署に回されて編集部には戻れないっていう話もよく聞きますし。レコード会社さんとかは育児休暇とかちゃんとあるとこはあるみたいですけど」

 

——先程もお話していただきましたが、音楽雑誌の編集部に入社する際、他に注意する点はありますか?

「1番大事なのは、人間関係ですね。編集部は、いろんな方面の人達に気を配らなくてはいけないので、そこは外せないです。よく周りから“取材で焦ったりしないのですか?”と聞かれるのですが、焦ります(苦笑)。でも、現場の中心である編集者が焦ったりテンパったりしてしまうと、周りの人達もその空気を察して焦ってしまうので、なるべく落ち着いているように見せなければならないんですよ。空気を読んで行動することですね(笑)」

 

——会社を辞めてからは何の仕事をするのですか?

「フリーの編集者になって、もっと幅広く仕事をしたいと思います」

 

——本日は貴重なお話、ありがとうございました!

「ありがとうございました」

 

 

インタビュー/ニコちゃん、土下座バン、すうぴい、姉御、SUNAぴー、ゆうき、宮川、コツコツ、ちゃい

構成・文/ちゃい


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